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【見世物】フランセス・オコナー「両腕のない美女「生きたミロのヴィーナス」」

フランセス・オコナー/ Frances O'Connor

両腕のない美女「生きたミロのヴィーナス」


生まれつき両腕を持たずにこの世に生を受けながらも、その境遇を才能へと変え、サーカスや映画の舞台で観客を魅了し続けた女性です。足で食事をし、文字を書き、編み物をし、そしてライフルを操る姿は、驚異と優雅さを併せ持つ唯一無二の芸となりました。1932年のカルト映画『フリークス』で銀幕に登場した彼女は、単なる見世物ではなく、社会の常識に挑み続けた先駆者でした。オコナーの物語は、逆境を力に変える人間の強さと、個性を輝かせることの大切さを、今も私たちに語りかけています。

概要


生年月日 1914年9月8日
死没月日 1982年1月30日
国籍 アメリカ
病名 先天性四股障害
職業 エンターテイナー
芸名 生きたミロのヴィーナス

フランシス・ベル・オコナーは、1914年9月8日にミネソタ州レンヴィル郡ホーククリーク・タウンシップで生まれました。

 

彼女は生まれつき両腕がなかった原因は母親が妊娠中にドイツ麻疹にかかったことによるものとされました。大きな身体的ハンディキャップを抱えていたにもかかわらず、フランシスは幼いころから卓越した適応力と才能を発揮し、周囲を驚かせていました。

 

フランシスの両親であるフレディ(「フレッド」)・リー・オコナーとエマ・ジョセフィン・フレドリクソンは、できる限りあらゆる面で彼女を支えました。フランシスには2人の兄弟がいて、デニスとウォレスといいました。家族はフランシスが幼い頃にワイオミング州へ移り住み、シェリダン近郊の小さな炭鉱町クリーンバーンに定住しました。フレッドは家族を養うために鉱夫として働き、その後はモナーク・コール社で自動車修理の仕事に従事しました。

 

両腕を持たずに育つことは、多くの人にとっては大きな障害になり得ますが、フランシスにとってそれは並外れた足の器用さを身につけるきっかけとなりました。幼いころから、食事、文字を書くこと、飲み物を飲むこと、さらには喫煙までも、足を使ってこなすようになりました。足でかぎ針編みや棒編みをする能力は彼女の特技として知られるようになり、周囲の人々を魅了しました。

 

 

フランシスの初等教育は、ワイオミング州モナークの地元の学校で受けました。1921年、6歳のときにシェリダン郡の学籍調査に初めて記録されています。ただし彼女の学びの道のりは通常とは異なっており、その多くは家庭や旅先で行われました。なぜなら彼女は幼いころから芸能活動を始めていたからです。

 

フランシスが芸能の世界に入ったのは、ほとんど偶然のような出来事でした。彼女の最初の大きな仕事は、スナップ兄弟のサーカスでの出演でした。当初は地元新聞で誤って報じられましたが、すぐに訂正され、彼女の特異な能力が注目されるようになりました。足だけで裁縫をしたり、馬に乗ったりする驚くべき芸はたちまち評判となり、彼女は名声を得ました。

 

 

その才能はすぐに見いだされ、フランシスは後にセルズ・フロト・サーカスと契約し、卓越した器用さを披露する多彩な演目をこなしました。9歳になるころには、彼女はサーカス界でよく知られた存在となり、アメリカ全土はもちろん、カナダやメキシコにも巡業で訪れるまでになっていました。

フランシスの両親が作成したポストカード。
フランシスの両親が作成したポストカード。

サーカス芸人として


サーカス芸人としての生活は、フランシスにとって厳しくもやりがいのあるものでした。彼女はハーゲンベック=ウォレス、アル・G・バーンズ、リングリング・ブラザーズ&バーナム・アンド・ベイリー、E.K.フェルナンデスなど、数多くのサーカス団と共に巡業しました。

 

演目には常に、足で食べる、飲む、書くといった日常動作の実演に加え、射撃まで含まれており、その驚異的な技は観客を魅了しました。彼女は「生きたミロのヴィーナス」や「腕のない驚異」といった愛称で呼ばれるようになりました。

 

中でも最も注目を集めたのは射撃の演目で、フランシスは足を使ってライフルを装填し、狙いを定め、発砲するという驚くべき精度と制御を披露しました。この演技はほかのパフォーマンスとともに彼女に広く称賛をもたらしました。

 

過酷なスケジュールの中でも、フランシスは教育をおろそかにしませんでした。ワイオミング州モナークから同行した教師たちが彼女に夜ごと授業を行い、旅先でも学業が遅れないよう支援しました。教育に対する彼女の取り組みは、強い意志と家族の将来への思いを示すものでした。

1931年撮影、セルズ・フロート・サーカスのサイドショー演目を収めた写真。フランセスがスターと共に写っている。
1931年撮影、セルズ・フロート・サーカスのサイドショー演目を収めた写真。フランセスがスターと共に写っている。

フランシスの私生活は、その職業的な経歴と同じくらい特筆すべきものでした。数々の困難に直面しながらも、彼女は家族や友人との親しい関係を大切にしました。特に母親は、彼女を支え、成功の機会を確実に与える上で重要な役割を果たしました。

 

また、同じ芸人仲間との関係も大きな意味を持っていました。フランシスは多くの同僚たちと親しい友情を築き、それが彼女のキャリアを通して支えや仲間意識をもたらしました。刺青の女性として知られるベティ・ブロードベント(上の写真で彼女の隣に立っている)との友情は、サーカス界の中で育まれた強い絆の一例でした。

 

フランシスは困難に正面から立ち向かい、常に前向きな姿勢を保ち続けました。その強さと忍耐力は周囲の人々を鼓舞し、彼女は多くの人にとって生きる勇気の象徴となりました。

映画『フリークス』に出演


1931年、フランシスの人生は大きな転機を迎えました。MGMのキャスティング・ディレクター、ベン・ピアッツァにスカウトされたのです。サーカスでの8年間を経て、17歳のときに彼女はトッド・ブラウニング監督の映画『フリークス』に出演することになりました。この作品は1932年2月に公開され、特異な身体的特徴を持つ人々を描いた画期的な作品となりました。

 

 

『フリークス』は当時としても、そして今日においても物議を醸す映画でした。見世物小屋で生きる人々の生活を繊細かつリアルに描き、美や「普通」に関する社会的な固定観念に挑戦したのです。フランシスの役柄は彼女の能力を示すものであり、彼女の人生をより広い観客に知らしめるきっかけとなりました。

フランシスの『フリークス』への出演は、彼女のキャリアにおいて大きな節目となりました。この映画は物議を醸し、否定的な反応も多く集めましたが、フランシス自身は搾取されたり、貶められたりしたと感じることはありませんでした。甥のウォーレス(ウォリー)・オコナーによれば、フランシスはこの映画への参加を前向きに受け止め、楽しんで取り組める仕事として捉えていたそうです。

 

この映画の物語は、トッド・ロビンズの短編小説『スパーズ』に着想を得ており、トッド・ブラウニング監督の演出と、個性豊かなキャストの演技によって具現化されました。サーカスの見世物小屋を舞台に、愛、裏切り、復讐といったテーマが描かれています。

晩年


『フリークス』出演後、フランシスは短期間ワイオミング州シェリダンで暮らしました。しかし彼女の人生は依然としてサーカスと深く結びついており、再びサーカスの世界に戻りました。そこは彼女にとって居心地の良い場所であり、芸を続けられる場でもあったのです。フランシスの人生の大部分はカリフォルニア州ロングビーチで過ごされ、仲間の芸人たちとの友情を保ちつつ、地域社会からも愛される存在であり続けました。

 

状況に適応する力と、芸を磨き続ける献身的な姿勢により、フランシスはサーカス界で人気を保ちました。彼女は長年にわたって観客を楽しませ、驚異的な技と温かい人柄で人々を魅了しました。引退時期は正確には分かっていませんが、多くの伝記では1940年代とされています。しかし実際には1950年代まで活動を続けていたようです。

 

フランシスは1982年1月30日、カリフォルニア州ロングビーチの自宅アパートで亡くなりました。67歳でした。彼女は生涯独身で、子どももいませんでした、ロサンゼルスのエバーグリーン墓地の「ショーマンズ・レスト」区画に埋葬されています。

カリフォルニア州ロサンゼルスにあるフランシス・オコナーの墓。
カリフォルニア州ロサンゼルスにあるフランシス・オコナーの墓。

フラシンス・オコナーの伝記


 

2024年、マイケル・ダイクホルストは、フランシスの甥の協力と励ましを受けて、彼女の人生を描いた200ページを超える本を執筆しました。マイケルは同時にフランシスに関するブログ記事も公開しています。

 

この本のタイトルは『Frances O'Connor: The Armless Wonder』で、シェリダン(ワイオミング州)歴史シリーズ第2巻の一部として出版されました。ダイクホルスト氏は、この作品をフランシスの生誕110年にあたる2024年9月8日に刊行しました。書籍は彼のウェブサイトを通じて入手可能です。


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