【解説】オルタナ右翼「2010年代に米国で発生した新しい右翼」

オルタナ右翼 / Alt-right

2010年代に米国で発生した新しい右翼


概要


オルタナ右翼(オルタナティブ・ライト)は、ゆるやかに繋がっている極右と白人国家主義者の運動。おもにネット上の現象で、2010年代に米国で発生し、その後、さまざまな国でも存在感を出し始めている。

 

この言葉に明確な定義はなく、さまざまな自称「オルタナ右翼」、メディアのコメンテーター、学者によって使用されてきた。

 

オルタナ右翼は、ヨーロッパ系アメリカ人のための極右アイデンティティ政治の一形態を推進する生物学的人種差別主義者の運動である。

 

そのメンバーの一部は、米国で白人の多数派が継続していることを保証するための厳しい移民制限政策を支持しており、また他のメンバーは、北米で白人分離主義的な民族国家を形成するために国を分割することを要求している。

 

オルタナ右翼として認識されているグループは、白人至上主義、白人分離主義、右翼ポピュリズム、反移民、人種差別、反共産主義、反シオニズム、反ユダヤ主義、ホロコースト否定、外国人嫌い、反インテリ主義、反フェミニズム、ホモフォビア、イスラムフォビアを支持する傾向がある。

 

2010年、アメリカの白人ナショナリストであるリチャード・B・スペンサーは、「オルタナティブ・ライト」というウェブマガジンを立ち上げる。彼の「オルタナティブ・ライト」は、アメリカにおける初期白人ナショナリズムの形態や、旧保守主義、暗黒啓蒙主義、ヌーベル・ドロイトなどの影響を受けている。

 

スペンサーが使っていた言葉が「alt-right」と短縮され、掲示板「4ちゃんねる」の政治板「/pol/」の極右参加者たちによって広まった

 

その後、アンドリュー・アングリンの『デイリー・ストーマー』、ブラッド・グリフィンの『オクシデンタル・ディセント』、マシュー・ハイムバックの『トラディショナル・ワーカー・パーティー』など、ほかの白人国家主義者のウェブサイトやグループと繋がりを持ち始める。

 

2014年のゲーマーゲート論争の後、オルタナ右翼はその知名度を高めるために荒らしやオンラインハラスメントを積極的に行うようになった。

 

2015年には、特にスティーブ・バノンのBreitbart Newsでの報道を通じ、2016年のドナルド・トランプの大統領選挙運動でのオルタナ右翼の支持を獲得し、より広範な注目を集めるようになった。なお、トランプは当選した際、オルタナ右翼の運動に対して否定的だった。

 

ウェブベースの運動からストリートベースの運動への移行を試みたスペンサーと他のオルタナ右翼は、2017年8月にバージニア州シャーロッツビルで開催された「Unite the Right」集会を開いた際に、アンティファなどの反ファシスト勢力の反発に直面する。この後、オルタナ右翼の運動は衰退し始めた。

 

一部のオルタナ右翼は、米国で白人ナショナリズムの思想を社会的に尊敬されるものにしようとしているが、「1488」系の一部のオルタナ右翼は、ショッキング性と挑発を意図して、過激な白人至上主義者やネオナチのスタイルを公然と採用している。

 

また、ごく一部のオルタナ右翼は反ユダヤ主義的で、ユダヤ人が白人大量虐殺を企てているという陰謀論を推進していますが、ほとんどのオルタナ右翼はユダヤ人を白人民族の一員と見なしている

 

オルタナ右翼は反フェミニストであり、より家父長的な社会を提唱し、男性の権利運動や、オンライン上のマノスフィアと呼ばれるミソジニーのグループと交差している。

 

オルタナ右翼は一般的に、経済保護主義と並んで反干渉主義や孤立主義の外交政策を支持している。

 

オルタナ右翼は、おもにオンライン上でその存在感を示すのに皮肉やユーモアを多用する。たとえば、ペペ・ザ・フロッグのようなインターネット・ミームを使った宣伝は、以前の白人ナショナリズムの形態とは一線を画したものである。

 

オルタナ右翼のメンバーは圧倒的に白人と男性が多く、学歴も低く、将来における生活水準の見通しに不安を抱き、ブラック・ライブズ・マターのような目に見える形の左翼運動に対する怒りをはらんでいる。

 

オルタナ右翼への反発は、社会主義者、リベラル派、保守派を含む政治的スペクトルの多くの分野から起きている。批評家たちは、「オルタナ右翼」という用語は白人至上主義のリブランディングに過ぎないと主張している。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Alt-right、2021年1月2日アクセス