【作品解説】丸尾末広「少女椿」

少女椿

12歳で天涯孤独になった少女の不幸な物語


丸尾末広「少女椿」
丸尾末広「少女椿」

概要


終わりなき不条理な世界


「少女椿」は、1984年に刊行された丸尾末広の代表作となるマンガ作品。浪花清雲作の街頭紙芝居「少女椿」を基盤にして、丸尾が独自にアレンジしている。

 

父親が家出し、母と2人で暮らしていた12歳の少女みどりは、母の病死後、行くあてもなく、見世物小屋のオーナーにだまされて小屋の見世物芸人にされ悲惨な生活を送っていた。

 

ある日、謎の芸人ワンダー正光が小屋に入団してみどりの一筋の光明がさしかかる。恋仲となった正光とみどりは小屋を退団し、二人で新しい生活を送る決意し、みどりは期待に胸を膨らませる。しかし、不条理にも正光は突然泥棒に刺し殺されてしまい、期待していた生活がすべて失われる。

 

ワンダー正光の姿を探すものの、どこまでいっても元の廃墟の世界に戻る無限ループ的な風景が続く。みどりは終わりなき不条理な無限ループと、自分をあざわらう見世物小屋芸人やワンダー正光、さらにみどりの両親の幻影に遭遇し、ショックのあまり半狂乱に陥り、泣き叫び、一人取り残されて「少女椿」は終了する。

初版と改訂版の差異


「少女椿」はこれまで3冊刊行されている。

 

1984年に青林堂から初版が刊行。

次に1999年に同じく青林堂から「少女椿 改訂版」が刊行。

さらに2003年に青林工藝舎から「少女椿 改訂版」が刊行されている。

 

上記の表紙とリンク先のAmazonのページは、2003年の青林工藝舎版である。

3冊の差異だが、以下のサイトに詳細は解説されているのでチェックしてもらいたい。どうやら会社側の内部分裂に伴う版権問題のため「改訂版」が出版されているのが大きなポイントで、内容においては、カバー表紙や描写に変更はあるものの大筋が変更されているわけではないらしい。

 

cafarde雑記帳

裏次元の一日

青林堂「少女椿」(1984年)
青林堂「少女椿」(1984年)
青林堂「少女椿 改訂版」(1999年)
青林堂「少女椿 改訂版」(1999年)
青林工藝舎「少女椿 改訂版」(2003年)
青林工藝舎「少女椿 改訂版」(2003年)

少女椿前章


少女椿には、ほかに辰巳出版の『漫画ピラニア』1981年8月号に掲載された短編版「少女椿」がある。

 

短編版では、みどりが見世物小屋に入団するまでの物語(母親が亡くなり、見世物小屋のオーナーに騙され連れて行かれるまで)が描かれている。

 

短編版「少女椿」は、『薔薇色ノ怪物』に収録されている。

辰巳出版 漫画ピラニア1981年08月号 丸尾末広「少女椿」掲載号
辰巳出版 漫画ピラニア1981年08月号 丸尾末広「少女椿」掲載号
丸尾末広「少女椿」前章。ラストの「遠足いきたい」というセリフが印象的。
丸尾末広「少女椿」前章。ラストの「遠足いきたい」というセリフが印象的。

少女椿映像版


「少女椿」は映像化もされている。1992年に原田浩により『地下幻燈劇画・少女椿』という題でアニメーション映画化されている。この作品は2006年に「MIDORI」というタイトルでフランスにてDVDが発売されている。

 

2016年にはTORICO監督により実写映画化・全国公開された。

少女椿演劇版


2011年10月には虚飾集団廻天百眼により舞台化され、ザムザ阿佐谷にて、10月13日から17日まで5日間7ステージ上演された。DVD化され販売もされている