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【完全解説】郭文貴「バノンとともに中国共産党の打倒を目標とする亡命富豪華人」

バノンとともに中国共産党の打倒を目指す亡命富豪華人


概要


生年月日 1970年5月10日、もしくは1968年10月5日
国籍

・アラブ首長国連邦(自称)

・中華人民共和国

職業

実業家、政治活動家、北京政泉控股有限公司オーナー

郭文貴(1970年5月10日、もしくは1968年10月5日)は中国の億万長者実業家、政治活動家、北京政泉控股有限公司の資産管理者。決め台詞は「一切都是剛剛開始」(全ては始まったばかりだ)。

 

郭浩云、マイルズ・グォー、マイルズ・クオックなどの名前でも知られている。最盛期には中国の富豪の中で73位にランクインしていた。

 

郭は中国当局から汚職などの悪行を告発され、賄賂、誘拐、マネーロンダリング、詐欺、強姦などの容疑をかけられる。逮捕令状が出た後、香港経由で2014年末に米国に亡命する。2016年末に、国際刑事機構(ICPO)から指名手配を受けているが米国は取引に応じていない。

 

渡米後、郭は中国高官の汚職やセックススキャンダルに関する告発、暴露して中国共産党を揺さぶる政治運動「爆料革命(whistle-blower movement)を始める。爆料とは日本語で「内部告発」という意味である。

 

また、スティーブン・バノンと知り合い、2人で「法治基金(Rule of Law Foundation)」を設立する。基金のおもなは中国共産党幹部の権力乱用行為を暴露し、中国政府に迫害された人々を援助することだという。

 

2020年には、バノンとともに自称中国亡命政府「新中国連邦(New Fedral State of China)」を設立。目標は中国共産党を滅ぼし、中国を法治的で平和を愛する国家に作り上げることだという。

 

郭は内部告発者であると主張しているが、彼の発言はニューヨーク・タイムズ紙などの一般的な米国メディアで取り上げられることはほとんどなく、むしろ批判的な姿勢を示している。そのため、2020年に自身の主張を中心とした反中共メディア「GUO.MEDIA」を設立し、積極的なメディア展開を行っている。

 

なお、郭はこれまでは中国共産党の中でも特に、江沢民など歴代の中国指導者は批判するのに対して、腐敗撲滅に取り組む習近平党総書記個人に対しては度々称賛している。

 

郭文貴自身は「郭七条」を掲げて、中国の腐敗や警察の違法行為に反対しているが、国家や習総書記に反対してるわけではないと再三主張していた。

略歴


若齢期


郭文貴は中華人民共和国の山東省聊城市莘県古城鎮西曹営村で、八人兄弟の七番目として生まれた。

 

郭家は吉林省盤石県紅旗嶺趙家溝へ移ったが、1970年代後半、故郷に戻った。1980年代、中学校卒業後、郭文貴は、恋人の岳慶芝を連れて、河南省鄭州市に移り、キャリアをスタートさせる。

 

1989年、二人とも黒竜江省林薬聯営公司の鄭州市事務所の職員になったが、「六四天安門事件」期間中、郭文貴はデモ隊に資金や物資を提供したため、逮捕され入獄。

中国富裕層時代


出獄後、1992年には家具工場の経営者、1993年には不動産会社オーナーになった。台湾人建築家の李祖原と連携して、五つ星ホテル「鄭州裕達国貿酒店」(1999年、河南省鄭州市中心部)と、竜形超高級ビル群「盤古大観(2007年、北京市朝阳区)を建設する。

 

2008年の北京オリンピック期間中にさまざまなな建設案件を受注するために北京に移り住んだ。彼の最も有名な資産は、北京オリンピックの前に建設されたオリンピックの聖火型のマンション「パング・プラザ」である。

 

2014年には中国の「胡潤百富榜」(フーゲワーフ長者番付)にて74位にランクインし、個人資産額は155億元(約2550億円)と推定された。

 

長く不動産開発や投資界で名を馳せてきたが、習近平政権が始動すると、彼の汚職撲滅運動のため後ろ盾だった高官が失脚したため、当局の追究を受けるようになる。

 

2015年にジャーナリスト胡舒立が運営する財神メディアの汚職調査で一躍有名になり、郭の政治的なコネクション、ビジネス取引、元ライバルに対する強硬戦術などが詳細に報じられた。

 

郭は胡による告発は名誉毀損であると主張し、また、胡は郭のビジネスライバルと恋愛関係にあった主張するなど、胡に対するさまざまな個人的告発で応酬した。

 

2015年1月、馬建・国家安全省次官が紀律違反違法行為の容疑で失脚するが、馬こそが郭の後ろ盾であったと中国メディアは報道している。2014年から米国に滞在していた郭は中国国内で複数の容疑で逮捕されそうになっていることに気づき、正式にアメリカへ亡命申請した。

 

習近平はオバマ政権に、米国に逃げ込んだ郭文貴を汚職容疑者として引き渡すように求めてきたが応じなかった。

アメリカで中共内部暴露で大手メディアから圧力


アメリカに国外逃亡して以降は、中国共産党内部の暴露を中心に活動を展開する。2017年1月23日以降、郭は明慶ニュース、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、BBCなどのメディアのインタビューを複数回受けている。

 

郭は2017年初頭に自身のYouTubeとTwitterのチャンネルを開設し、ライブ独白を通じて、中国の一部の高官の腐敗を暴露して中国共産党を揺さぶる政治告発運動「爆料革命」を開始。爆料とは「暴露」という意味。初期は特に、王岐山と孟建柱を敵視していた。

 

郭はマンハッタンのアッパーイーストサイドにあるセントラルパークを見下ろす8200万ドルのアパートを所有し、ニューヨークの自宅から中国の政治制度における汚職疑惑に注目を集めるための政治告発を行った。なお、2018年11月、郭はこのアパートを6700万米ドルで売りに出している。

 

また、郭は、ドナルド・トランプ米大統領が経営するフロリダのリゾート地「マーアラゴ」や、ロンドンのメイフェアにある「マークスクラブ」の会員に入会。

 

2017年1月、明鏡ニュースのインタビューで、前中央規律検査委員会書記の賀国強のスキャンダルを暴露して話題になる。

 

2017年4月20日、VOAとの3時間に及ぶライブインタビューで王岐山に関するスキャンダルを話した際、ライブ中に突然打ち切られる。3時間話す予定であったが、1時間で打ち切られた。

 

習近平が王岐山を信用しておらず、王岐山自身の汚職問題の調査をするように、側近の公安副部長の傳政華に命じて、その協力を傳政華が郭文貴に要請した、という話が終わったタイミングだった。

 

後に郭文貴にインタビューして中継を行っていた記者3人がVOAから解任されており、何らかの圧力があったものとされている。

 

ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ、フォーブスなどの大手米メディアは、いつも郭と彼の告発運動について批判的に報じている

 

2017年4月には国際刑事警察機構(ICPO)によって国際指名手配されたが、これは前年12月にICPO総裁に初の中国人である孟宏偉が就任したことで実現したとされている。

 

2017年6月、郭の標的の1つだったHNAグループは、郭を名誉毀損で訴える。

 

2017年10月4日に予定されていた米シンクタンク、ハドソン研究所(Hudson Institute)主催のイベント、「郭文貴氏と話す会」は、直前になって中止。

 

2017年10月18日、中国共産党第十九回全国代表大会の開幕に際して郭文貴のYoutubeとTwitterとFacebookのアカウントが一時凍結された際は中国政府の圧力が囁かれた。11月27日までYoutubeとTwitterとFacebookのアカウントの一時凍結がまだ完全に解除されなかった。凍結の理由は公開されていない

 

また、元中国国家安全保障局副局長の馬建、元河北省政治法制局長官の張越など、習近平の汚職撲滅運動の影響で郭と関係があるとされていた多くの中国高官が逮捕されているが、郭は汚職撲滅運動の魔女狩り対象の1人として認識されている。

 

凍結されたままの郭文貴のTwitterアカウント。
凍結されたままの郭文貴のTwitterアカウント。

インディペンデント・メディア「郭媒体(GUO.MEDIA)」の設立


自身が発言する場を失った郭は、2018年1月22日、SNSサイト「郭媒体(GUO.MEDIA)」を立ち上げる。目的は中国の言論自由、民主主義、法治社会の実現に関心を持つ利用者に、最も自由な意見交換プラットフォームを提供すること

 

2018年8月、「明報網站」や「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」などの複数の香港メディアは、香港警察が郭の娘のGuo Mei名義でマネーロンダリングを行ったとして告発され、郭一家の資産を凍結したと報じた。

 

2018年10月12日、中国遼寧省大連市の中級人民法院(地裁)は、郭文貴が実質オーナーである「北京政泉控股有限公司(Beijing Zenith Holdings Co., Ltd)」に対し、強迫取引罪で罰金600億元(約9,600億円)を徴取。

 

2018年11月20日、郭文貴はスティーブン・バノンとニューヨークで記者会見を開き、「法治基金(Rule of Law Foundation)」を設立すると宣言。郭文貴が1億ドルの資金を提供し、バノンは基金を運営する会長に就任する。基金の主なミッションは中国共産党幹部の権力乱用行為を暴露し、中国政府に迫害された人々を援助すること

 

郭は名誉棄損で、ロビイストのロジャー・ストーン(トランプ陣営の元顧問)を訴える。2018年12月17日、ロジャー・ストーンは郭文貴関連の無実な情報をWebサイトInfowarsなどで拡散したことを認めた上で、Infowars やInstagram、Facebook、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストで謝罪声明を公表。

 

2019年3月、母親が中国で死去。

 

2019年3月、ニューヨーク中心部のマンハッタンで、7階建ての防弾ビルを5年間借りて、「ヒマラヤ大使館」(Himalaya Embassy)と命名し、「法治基金」と「郭媒体」の事務所として利用

 

2019年7月、ウォール・ストリート・ジャーナルは郭文貴が中国の反体制派を装った中国政府のスパイであると報じた。8月2日、郭文貴氏はウォール・ストリート・ジャーナルやCNN、CNBC、Strategic Visionなどを起訴し、無実な報道を削除するほか、5,000万ドルの賠償金を要求。

 

 

2019年暮れより世界中で大流行した新型コロナウイルスについては、中国のウイルス研究所より広まったとする説をとっている。

新中国連邦の設立


2020年6月4日にバノンとともに、中国共産党政府に取って代わる新政府「新中国連邦」の樹立を宣言した。6月4日は、1989年の天安門事件の日であり、中国共産党が戒厳令を発表し、1ヶ月以上続いた大規模な抗議を取り締まった日である。

 

2020年8月20日までに、バノンは郵便監察局の捜査員により詐欺、資金洗浄の容疑で逮捕されたが、逮捕場所はコネチカット州に停泊中の郭文貴所有の大型ヨット上であった。

 

中国国内からの内部告発を奨励、また中国共産党の衰退と崩壊が避けられない場合に、政府機能を引き継ぐ準備を整える。

 

元プロサッカー選手の郝海東とその妻で元バドミントン選手の葉釗穎が、新中国連邦に参加を表明すると直後に2人のWeiboのアカウントは凍結された。

さまざまな告発


1.臓器移植に関わる大量殺人


有名な暴露としては、2017年9月の「臓器移植に関わる大量殺人」に関する告発がある。

 

郭は江沢民氏の息子・江綿恒氏が複数回にわたり腎臓移植の手術を受けていると発言。江綿恒氏は2004年から2008年の間、南京軍区の医院で3回、腎臓移植を受けているが、その腎臓移植手術のために5人が殺害されたとし、うち2回は移植後に拒絶反応が起きたことによる再移植だったという。

 

その時のドナー選びや腎臓の手配は、司法・警察・公安を管掌する党中央政法委員会トップの孟建柱書記と上海政法委員会責任者及び軍幹部数人が行った。郭によると、孟建柱の母親も、複数回の腎臓移植を受けているという。

 

孟の部下で公安部国内安全保衛局の孫立軍局長は、適合性の良い囚人を殺害して腎臓を入手したが、囚人の取り違えで無関係な人まで殺害。真相を隠滅するため、執刀医や事情を知る関係者を全員殺害した、と郭氏は主張している。

 

さらに、「新疆の21歳の若者はホテルに泊まった際、偽造の身分証明書を使用したため、警察に連行された。身体検査の時、この若者の臓器がある幹部の親族に適合することが判明したため、当局は彼を爆弾テロを企てた容疑者に仕立て、死刑判決を下した。そして彼の腎臓を取り出した。この若者の肝臓も別の幹部の親族に移植した。オンデマンド殺人が行われている」と述べた。

 

さらに、2014年に起きたマレーシア航空機失踪事件は、移植手術の関係者が多数、同便に搭乗していたため、江沢民派が意図的に墜落させたと述べた。理由は、孟建柱氏が一連の臓器移植とそのために犯した殺人事件が発覚しないよう、関係者が登場したマレーシア航空機の失踪事件を企てたという。

 

この告発の後、予定されていた米シンクタンク、ハドソン研究所主催のイベント、「郭文貴と話す会」は直前になって中止となった。

 

郭氏はその後のYouTube動画でイベントの中止について「江沢民の息子江綿恒の臓器移植の内幕を暴露したことが原因だ」と話し、江沢民派の勢力が米政府に浸透していると警告した。

2.藍金黄計画


2017年10月5日には、米ワシントンにあるナショナル・プレス・クラブの記者会見に登場し、中国共産党の藍金黄計画について言及した。藍金黄計画とは、共産党が国外政府の幹部を丸め込む手段を指す。

 

中国軍のサイバー部隊「ネット藍軍」に由来した「藍」とは、メディアやインターネットを利用して宣伝・洗脳活動、「金」とは金銭利益による誘惑、中国語ではポルノを意味する「黄」とはハニートラップのこと。

 

日本やアメリカで、金品やハニートラップが展開されていると指摘している。中国政府は汚職容疑者として郭文貴らを引き渡すように求めたが、米国政府により拒否されている。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Guo_Wengui、2020年8月21日アクセス

https://news.line.me/issue/oa-newspostseven/fb92d4463c9b、2020年8月21日アクセス

https://www.epochtimes.jp/p/2017/09/28461.html、2020年9月27日アクセス

https://www.epochtimes.jp/p/2017/10/28778.html、2020年9月27日アクセス

https://www.newsweekjapan.jp/lee/2017/09/ttu_1.php、2020年9月27日アクセス