アンディ・ウォーホルの「ファクトリー」

ファクトリ / The Factory

ウォーホルのスタジオ兼芸術家のサロン


概要


「ファクトリー」はアンディー・ウォーホルのニューヨークのスタジオの名前。1962年から1984年まで3回移転している。

 

ウォーホルが作品を制作するだけでなく、美術家、ミュージシャン、トランスジェンダー、俳優など自由な思想を持つ人々が集るサロンになり、さまざまなコラボレーションを行った。自主製作の実験的映画が撮影、上映された。

 

最初はマンハッタン、ミッドタウンの東47番街の231番地にあるビルの5階だった。家賃は年間100ドルだった。内装はすべて銀色。工場で大量生産するかのように効率よく作品を制作することをイメージして造られた。

 

彼はここでアート・ワーカー(art worker; 芸術労働者の意)を雇い、シルクスクリーンプリント、靴、映画などの作品を制作した。ビルのエレベーターまで銀色だった。アトリエの中央には有名な真っ赤なカウチソファが置かれていた。村上隆はこの「ファクトリー」のアート・ワーカー体制に影響を受け、「ヒロポン・ファクトリー」、次いで現在の「カイカイキキ」を設立して実際に現在も運営している。

 

なお、ファクトリーに出入りして、映画などに出演した人びとは「スーパースター」と呼ばれた。

部屋全体は銀色でおおわれ、中央にウォーホルが寝そべる赤いカウチがある。
部屋全体は銀色でおおわれ、中央にウォーホルが寝そべる赤いカウチがある。
カウチからの風景。おもにシルクスクリーン作品をアートワーカーを使って制作していた。これはのちの村上隆の「ヒロポン・ファクトリー」や「カイカイキキ」のルーツである。
カウチからの風景。おもにシルクスクリーン作品をアートワーカーを使って制作していた。これはのちの村上隆の「ヒロポン・ファクトリー」や「カイカイキキ」のルーツである。

おもなスーパースター

※はリンクあり。


※ジャン=ミシェル・バスキア(画家)
※ジャン=ミシェル・バスキア(画家)
ヨーコ・オノ(現代美術家)
ヨーコ・オノ(現代美術家)
デヴィッド・ボウイ(歌手)
デヴィッド・ボウイ(歌手)
ウィリアム・S・バロウズ(作家)
ウィリアム・S・バロウズ(作家)

ジョン・レノン(歌手)
ジョン・レノン(歌手)
ベルベット・アンダーグラウンド(歌手)
ベルベット・アンダーグラウンド(歌手)
キース・ヘリング(画家)
キース・ヘリング(画家)
※クラウス・ノミ(歌手)
※クラウス・ノミ(歌手)

ジャッキー・カーティス(女優)
ジャッキー・カーティス(女優)
デボラ・ハリー(歌手)
デボラ・ハリー(歌手)
エリック・エマーソン(俳優)
エリック・エマーソン(俳優)
マドンナ(歌手)
マドンナ(歌手)

ジョーイ・アイリス(パフォーマンス)
ジョーイ・アイリス(パフォーマンス)
グレイス・ジョーンズ(歌手)
グレイス・ジョーンズ(歌手)
ミック・ジャガー(歌手)
ミック・ジャガー(歌手)
ブライアン・ジョーンズ(歌手)
ブライアン・ジョーンズ(歌手)

ジェラルド・マランガ(詩人)
ジェラルド・マランガ(詩人)
ライザ・ミネリ(歌手)
ライザ・ミネリ(歌手)
ポール・モリセイ(映画監督)
ポール・モリセイ(映画監督)
ニコ(女優)
ニコ(女優)

ルー・リード(歌手)
ルー・リード(歌手)
ウルトラ・バイオレット(美術家)
ウルトラ・バイオレット(美術家)
メアリー・ウォロノフ(女優)
メアリー・ウォロノフ(女優)
ビリー・ネーム(写真家)
ビリー・ネーム(写真家)

ポール・アメリカ(俳優)
ポール・アメリカ(俳優)
ペニー・アーケード(パフォーマー)
ペニー・アーケード(パフォーマー)
ロニー・カットローン(美術家)
ロニー・カットローン(美術家)
マリオ・モンテス(俳優)
マリオ・モンテス(俳優)


ファクトリーと音楽活動


ヴェルヴェット・アンダーグラウンド


ファクトリーは、ルー・リード、ボブ・ディラン、ミック・ジャガーなどのミュージシャンやトルーマン・カポーティなどの小説家が集まるサロンになった。サルバドール・ダリやアレン・ギレンズバーグも訪れたことがある。

 

ファクトリーでウォーホルはリードとコラボレーションをする。1965年に、ニューヨーク・ロックバンド「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」をプロデュース、1967年にデビューアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』のジャケットワークを担当した。

 

黄色いバナナに焦点をあてたジャケットで、初期の盤ではバナナの皮の部分がシールになっており、剥がして果肉が現れるしかけになっていた。

アンディ・ウォーホルとヴェルベット・アンダーグラウンド。
アンディ・ウォーホルとヴェルベット・アンダーグラウンド。
『ヴェルベット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』のジャケット。
『ヴェルベット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』のジャケット。

ローリング・ストーンズのアルバムを手がける


ウォーホルは、ほかにローリング・ストーンズのアルバム『スティッキー・フィンガーズ 』のジャケットワークを手がけた。表側はジーンズを穿いた男性の股間のクローズアップで、裏側では尻を向けている。表側には本物のジッパーが取り付けられており、実際に開くことができる。

 

シールがはがせるバナナのジャケットワークにせよ、ジッパーを開くことができるジーンズのジャケットワークせによ、セックスをイメージしていることは明らかである。

『スティッキー・フィンガーズ 』のジャケット。
『スティッキー・フィンガーズ 』のジャケット。

あらゆるアングラ表現を統合するイベント「EPI」


ウォーホルは1966年から1967年にかけて開催したマルチメディアイベントシリーズ「The Exploding Plastic Inevitable(通称EPI)」で、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドをはじめ、美術、ロック、ウォーホル映画、ダンサー、S&Mのイメージを連結させた壮大な光景をプロデュースした。

 

また、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとEPIのリハーサルやたむろする拠点としてファクトリーを利用していた。

1966年6月21−26日にシカゴで開催されたEPIの告知ポスター。
1966年6月21−26日にシカゴで開催されたEPIの告知ポスター。

性的マイノリティ者のサロン


アンディ・ウォーホルは、アメリカの大衆文化を芸術を通して表現する一方で、大衆社会の保守的な社会観をけなすかなのような表現もしていた。

 

なぜなら、ファクトリーで撮影した彼の映像のほとんどには、ヌード、ポルノグラフィック、薬物使用、同性愛、トランスジェンダーの人々が映っていたからで、それは主流の映画館で見るようなものではないマイノリティ社会の姿だったからである。

 

しかし、1960年代におけるセクシャリティ観として、ファクトリーで起こったフリー・ラブと呼ばれるものは、高い理想としてよりオープンに受け入れられるようになった。ウォーホルは彼の映画や演劇やイベントで、頻繁にトランスジェンダーの人々や性的にマイノリティの人々を活用した。

 

またドラッグを使った乱交パーティは頻繁にファクトリーで行われていた。

映画


ポルノやナイトクラブ上映中心の地下映画制作


ウォーホルは、1963年から映画の制作を始めている。一般公開する前に友人たちにファクトリーで上映して反応を見ていた。ただ、ポルノ映画のような過激な内容だったため一般の映画館で上映されることはなく、ナイトクラブやポルノシアターで一般上映された。

1963

  • Kiss
  • Rollerskate
  • Haircut no. 1
  • Haircut no. 2
  • Haircut no. 3

1964

  • Handjob
  • Blow Job
  • Screen Tests (1964–1966)
  • Jill Johnston Dancing
  • Eat
  • Couch
  • Henry Geldzahler
  • Shoulder
  • Soap Opera
  • Taylor Mead's Ass
  • Mario Banana
  • Harlot
  • 13 Most Beautiful Women
  • 13 Most Beautiful Boys
  • 50 Fantastics and 50 Personalities

1965

  • John and Ivy
  • Screen Test #1
  • Screen Test #2
  • Drink
  • Suicide (Screen Test #3)
  • Horse
  • Vinyl
  • Bitch
  • Poor Little Rich Girl
  • Face
  • Afternoon
  • Beauty No. 1
  • Beauty No. 2
  • Space
  • Factory Diaries
  • Outer and Inner Space
  • Prison
  • The Fugs and the Holy Modal Rounders          
  • My Hustler
  • Camp
  • More Milk, Yvette
  • Lupe

1966

  • Ari and Mario
  • Eating Too Fast (a.k.a. Blow Job #2)
  • The Velvet Underground and Nico: A Symphony of Sound
  • Hedy (a.k.a. Hedy the Shoplifter)
  • The Beard
  • Salvador Dalí
  • Superboy
  • The Chelsea Girls
  • The Bob Dylan Story
  • Since (a.k.a. The Kennedy Assassination)
  • Mrs. Warhol
  • Kiss the Boot
  • The Andy Warhol Story
  • A Christmas Carol
  • **** (four stars) (a.k.a. The 24-Hour Movie)

1967

  • Imitation of Christ
  • I, a Man
  • The Loves of Ondine
  • Bike Boy
  • Tub Girls
  • The Nude Restaurant
  • Sunset

1968

  • Lonesome Cowboys
  • Flesh
  • Trash (1968–1969)
  • Women in Revolt (1968–1971)

1969

  • Blue Movie

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