【社会解説】サブカルチャー「母集団文化内の異端的な小集団文化」

サブカルチャー / Subculture

異なる少数文化圏にいる人たち


欧米を起源とする本来のサブカルチャーのイメージ。
欧米を起源とする本来のサブカルチャーのイメージ。

概要


サブカルチャーとは所属している母集団文化内における母文化とは異なる小集団の文化を形成している人々たちのこと。

 

多くのサブカルチャーは、田舎よりも都市部において仲間をつくり独自の生活様式や行動規範を共有している。特に文化的、政治的、性的問題に関して独自の規範や価値観を持つ。彼らが母文化から弾圧されず生活できている場合は、民主主義社会の一部として認識され、正常であることを示している。

 

世界において代表的なサブカルチャーはヒッピーロック、パンク、ゴスLGBT黒人文化ヒスパニックバイカー(暴走族)などである。

 

サブカルチャーに関する概念は、大学においてはおもに社会学、もしくは文化研究(カルチュラル・スタディーズ)で研究が進められてきた。

 

実態として重なる部分はあるが、サブカルチャーはカウンター・カルチャーやポップカルチャーらとは異なる概念である。subcultureは日本では「下位文化」として訳され紹介されているが、「sub」には「副」「次」「亜」「準」「補」といった意味も含まれ、単純に「上位文化」や「支配的文化」の対義語として使用するのは誤用である。

 

日本において「サブカルチャー」という言葉は、1980年代ころから都会の特定の世代の若者向けの表現の様式ないしコンテンツを指す言葉として使用されるようになった。

 

21世紀現在、日本においてサブカルチャーという言葉が使われる場合は、アニメ、漫画、ゲーム、アイドル、J-POPといったポップカルチャーコンテンツ全体を指し示す総称として使われ、本来マイノリティ文化を指ししめす言葉として利用されるケースは少ない。

重要ポイント

  • 母集団文化内における母文化とは異なる小集団の文化
  • 代表的なのはヒッピー、ロック、パンク、ゴス、LGBTなど
  • 大学では社会学のカルチュラル・スタディーズで扱われる

サブカルチャー研究に関する代表的な書籍


カルチュラル・スタディーズと呼ばれ扱われるサブカルチャーが欧米をルーツとするオリジナルである。本格的にサブカルチャーを研究するためには以下の書籍を熟読しつつ、日本のサブカルチャーと比較しながら研究するほうがよい。


定義・サブカルチャーとは何か


 オックスフォード英語辞典では、「マジョリティ文化の信念や価値観と相違のあるマジョリティ文化内にいる文化集団」と定義されている。

 

1950年に社会学者のデビッド・リースマンは、サブカルチャーとマジョリティとを区別し、「無抵抗に商業的なものを受け入れていく大多数の人に対し、積極的に少数派のスタイルを追い求めて、転覆的な価値観を提示する人たち」を“サブカルチャー”と定義した。

 

イギリスの社会学者のディック・ヘブディジは、1979年に出版したイギリス戦後若者文化に焦点を当てた研究本『サブカルチャー:スタイルの意味』で、サブカルチャーの意義とは「正常をひっくり返すこと」と主張。ほぼカウンターカルチャーと同じ意味とととらえている。

 

サブカルチャーは社会において支配的・正常的・標準的と思われているものに対して批判を行うための、の部分を知覚するの役立つともされる。そのため、サブカルチャーが弾圧されることなく存在している社会は、民主主義社会が正常に機能していることを示す。

 

また、サブカルチャーには社会から逸脱した人たち、無視されている人たちを結びつけ、彼らにアンデンティティ生成を促す役割がある。

 

1995年、サラ・ソーントンはピエール・ブルデューを促し、文化的知識や商品として成功した「サブカルチュラル・キャピタル」は、成長するとほかの集団の人々との差別化を支援すると話している。

 

2007年にケン・ゲルダーは、社会への浸透基準をベースにカウンターカルチャーとサブカルチャーは区別すべきだと提案した。サブカルチャーを識別するにのに、6つのキーワードがあるという。

 

1:仕事が嫌いな人

2:階級や等級といったものに対してネガティブ、もしくは相反する感情を持つ人

3:資産よりも活動領域を意識する人(ストリート、クラブ、アートなど)

4:家族や自国から逃れ、非国内的な形態を取る人(家族よりソーシャルネットワーク)

5:過剰で誇張しがちな様式

6:普通の生活や大衆的享楽の拒否

 

社会学者のG.A.ファインやシェリル・クレインマンは、1979年の調査で、サブカルチャーはグループの芸術、ふるまい、規範、価値観を作り出すことによって潜在的に仲間になろうとすると考えた。

サブカルチャーに関する研究の歴史


アメリカ「シカゴ学派」とイギリスの「カルチュラル・スタディーズ」


subcultureは、20世紀初頭の多様な人種で構成されるアメリカ社会において、社会学者たちによって作られた言葉である。

 

当時、社会学の研究は大都市に焦点をあてられるようになり、移民や人種的なコミュニティのなかで共有されている文化や、都市のストリートにたむろする非行少年たちの文化、渡り労働者たちの文化を研究対象にしはじめた。

 

シカゴ大学社会学部を中心にして形成された主に都市社会学者のグループ「シカゴ学派」が「subculture」の言葉のルーツとなった。

 

次に戦後イギリスで、アメリカ都市社会学のサブカルチャー研究に対抗して、カルチュラル・スタディーズの若者文化(ユース・カルチャー)の研究が登場しはじめる。

 

カルチュラル・スタディーズとは、バーミンガム大学現代文化研究所(1964年から2002年)のことで、初代所長はリチャード・ホガート、68年からスチュアート・ホール。彼らを中心にしたユース・カルチャーの研究機関のことである。

 

そこでは労働者階級のコミュニティ、なかでも若い男性たちのラッズ・カルチャー、50年代のテディ・ボーイズないしテッズ、60年代のモッズとロッカーズ、スキンヘッズ、70年代のパンクスなどが研究対象となり、「ユース・サブカルチャーズ」という言葉が使われた。

 

一般的にサブカルチャー研究は、アメリカのシカゴ学派とイギリスのカルチュラル・スタディーズの研究成果を基盤に、両者の研究をいかに関連づけ、そこからどのような展望を見出していくかが議論の焦点となっている。

 

近代西洋サブカルチャーの歴史を参照。

 

日本ではこうした欧米社会学的な視点での日本のサブカルチャー研究はほとんど進んでおらず(難波功士「族の系譜学」ぐらい)、ごく少数の社会学者やジャーナリストが、メインカルチャーから逸脱した文化や犯罪的なアンダーグラウンド・カルチャーを散発的に紹介するだけに留まっている。

 

今日の日本社会では、圧倒的に何らかのメディアやコンテンツ(エヴァンゲリオンや初音ミクなど)を通じて現代社会のありようを分析するものが主流である、コンテンツを受容しているファン集団・族を研究をしたものは少ない。

難波功士による日本のサブカルチャー(族や系)の系譜の一例。「族の系譜学」より。
難波功士による日本のサブカルチャー(族や系)の系譜の一例。「族の系譜学」より。

ヘブディッジによるサブカルチャー理論


サブカルチャーの特徴


『サブカルチャー:スタイルの意味』は、1979年にイギリスの社会学者ディック・ヘブディッジが出版した、イギリス戦後のワーキング・クラスの若者文化の反抗様式を分析した書籍である。

 

 ディック・ヘブディッジ(1951年生まれ)はイギリスの社会学者。バーミンガム大学のリサーチ・センターである現代文化研究センターで、カルチュラル・スタディーズの代表的理論家スチュアート・ホールのもとで働く。

 

ヘブディッジの理論はホールのサブカルチャー理論を基盤としている。また、文芸批評家のリチャード・ボガート、レイモンド・ウィリアムス。マルクス理論学者のルイ・アルチュセール、ベルトルト・ブレヒト、アントニオ・グラムシ、アンリ・ルフェーヴル。

 

アメリカの社会学者のウイリアム・F・ホワイト、アルバート・コーヘン。フランスの構造主義哲学者のロラン・バルト、ジュリア・クリステヴァ、クロード・レヴィ=ストロース、ジャック・ラカンなどの学説を引用している。

 

ひとくちにサブカルチャーといってもいろいろあるが、なかでも、テディー・ボーイ、モッズ、ロッカー、スキンヘッド、パンクに焦点を当てたサブカルチャーの分析となっている。

 

ヘブディッジによれば、どのサブカルチャー集団においても、ファッション、音楽、ダンス、化粧、ドラッグといった諸要素が連結しながら構成される共通点があるという。音楽単体、ダンス単体で発展する文化は少ない。

 

また、サブカルチャー集団のメンバーたちは、皆、同じファッション、音楽、髪型、ふるまい、業界用語、その他の視覚的な装飾品を身に付けることによって仲間であることを合図しあうケースが多いという。

サブカルチャーの発生原因


サブカルチャーの発生の原因については、歴史・階級・競争・経済、マスメディアなどの環境が関係すると主張している。たとえば、白パンクと黒レゲエ文化には、その根底に共通したテーマがある。その共通したテーマとはイギリス国を象徴するものへの否定だという。

 

一見、この両者は無関係に見えるものだが、ヘブディッジは彼らの文化の類似点を指摘し、説明しながらこの共通点を本書で論証していく。

 

ヘブディッジによれば、すべてのサブカルチャーは同じような遷移を起こすという。サブカルチャーはまず「抵抗」という形で現れ始める。そして支配的な社会やマジョリティは、多くの場合初期段階において、発生したサブカルチャーに対して過激的で不安に陥らせる存在としてネガティブな見方を行い、一時的に圧力を加えようとする。

サブカルチャーの行き先


 サブカルチャーの集団が大きくなると、最終的には必ず実業家たちが、彼らの文化や音楽に対してビジネスチャンスを嗅ぎ取り、その後、メインストリームにもサブカルチャーの要素が現れはじめ、最終的には「反抗的」「破壊的」「過激」という要素がメインストリームのコンテンツの1つとなり、サブカルチャーはマジョリティ市場に飲み込まれて死を迎えるという。

 

現在、特定のサブカルチャーのファッションをしているからといって、その人が特定のサブカルチャーに所属する人かどうか判別するのは難しくなっている。

 

音楽を基盤としたサブカルチャーは、特にこのようなプロセスを経て崩壊することが多い。ジャズ、ゴス、パンク、ヒップホップ、レイブなどのようなサブカルチャーは、短期間のうちに大衆文化に飲み込まれたサブカルチャーの代表といえるが、これは、シュルレアリスムやアヴァンギャルド芸術が、商業主義に利用されるプロセスとよく似ている。

 

ヘブディッジはパンク・サブカルチャーは、ダダやシュルレアリスムと同じく「過激な芸術的実践」を共有していると主張している。

 

サブカルチャーの中には、ファッションや音楽などのスタイル重視を修正もしくは拒否して、商業的搾取に反抗するためイデオロギー主義を採用し、メンバーたちに同調圧力をくわえることもある。 

アーバン・トライブ(都市部族)


サブカルチャーと近い言葉にアーバン・トライブという言葉がある。

 

1985年フランスの社会学者マフェゾリ,Mは「アーバン・トライブ(都市部族)」という言葉を作り、1988年に『部族の時代:大衆社会における個人主義の衰退』という本を出版し、話題になった。

 

マフェゾリによると、アーバン・トライブとは都市部で共通の趣味を共有する少数グループのことを指し、これら都市部に潜む小さなグループのメンバーは、皆同様の世界観、ファッション、行動パターンを持つ傾向があるという。パンクは典型的なアーバン・トライブの1つであると主張している。

 

アーバン・トライブは共通の利益集団に集まり、伝統的な家族構造の代わる都市生活を楽しむ25〜45歳の独身者であるという。

セックス・サブカルチャー


1960年代のセックス・ボリューションは、特にヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、白人が居住する南アフリカの都市部において、確立されてきた性、および性的規範の文化的拒絶を導くきっかけとなった。

 

性的分野における許容性の高い環境は、セクシャル・サブカルチャー人口の拡大をもたらし、規範に基づかない文化的表現をも生み出した

 

ほかのサブカルチャーと同様に、セクシャル・サブカルチャーもまたメインストリームと自身らを区別するため、特有のファッションやふるまいを採用しはじめた。

 

特に同性愛者は20世紀において最大のセクシャル・サブカルチャーとみなされており、ゲイ・カルチャーを通じて自己表現をしている。

 

21世紀になり同性愛がますます一般社会に受容されるようになると、ゲイ・カルチャーはもはや世界中の多くの場所でサブカルチャーと考えられていないものの、レザー・フェチ、ベア、デブ専のような一部のゲイ・カルチャーはゲイ・カルチャー内でサブカルチャー的な要素をかたどっている

2009年メキシコシティのベア・カルチャー運動
2009年メキシコシティのベア・カルチャー運動

日本のサブカルチャーと海外の違い


日本では1960年代に世界的なカウンターカルチャー、アンダーグラウンド・カルチャー、女性解放運動の影響を受け、こうしたカルチャーや運動と関連する文化全般を「サブカルチャー」の語に収斂していった。

 

旧来のハイカルチャーとも大衆文化とも異なる、都会の特定の世代の若者向けの表現の様式ないしコンテンツを指す言葉として「サブカルチャー」と表記されるようになった。テレビ・ラジオ番組、ロック、フォーク、アニメ、漫画、ニューシネマ、ヴィジュアル雑誌、ファッションなどがおもなコンテンツである。

 

1990年になってから、アカデミズムにおいてカルチュラル・スラディーズの紹介も進み、その影響を多少なりとも影響を受けたユース・サブカルチャーズ研究も進みはじめた。クラブ、レイブ、ゴス、暴走族などがそうである。

サブカルチャー系統


・アフロフューチャーリズム

・スポッティング

・アナーコパンク

・アニメオタク

・BDSM

・ビート・ジェネレーション・ビートニク

・バイカー

・ビルズ

・バイオパンク

・ボディビルディング

・ボヘミアニズム

・暴走族

・ブロウニー

・カコフォニー・ソサイエティ

・カジュアル

・チョンガ

・コスプレ

・キュービング

・サイバーゴス

・ダークカルチャー

・デッドヘッド

・ろう文化

・デモシーン

・ディーゼルパンク

・エモ

・ファンダム

・フリークシーン

・ファーリー・ファンダム

・フューチャリズム

・ゲーマー

・グラムロック

・ゴシックロリータ

・ゴス

・グリーサー

・ガターパンク

・ハッカー

・ハードコア・パンク

・ハードライン

・ヘビーメタル

・ハイカルチャー

・ヒップホップ

・ヒッピー

・ヒップスター

・ハイプビースト

・インダストリアル

・インセル

・ジャガロ

・モダン・ジャグリング・カルチャー

・ジョック

・ジャングル

・K-POP

・ラッドカルチャー

・サップ

・レザーフェティシズム

・メイカーズムーブメント

・マンガス

・メタルコア

・ミリタリー・ブラット

・モッド

・ネオ・ビクトリアン

・ナード

・ニュー・ロマンティック

・ノーザン・ソウル

・ヌーディズム

・オタク

・Otherkin

・パチューコ

・古着

・ポケモン

・サヴァイヴァリズム

・プレピー

・サイケデリア

・パンク

・クィア

・ラガレ

・鉄道ファン

・レイブ

・ライオット・ガール

・リベット

・ロカビリー

・ロッカーズ

・ロールプレイングゲーマー

・ルードボーイ

・SFファン

・スクーターボーイ

・スカウティング

・スケート・パンク

・スキンヘッド

・ソウルボーイ

・スチームパンク

・Stilyagi 

・ストレート・エッジ

・サーフカルチャー

・Swingjugend

・スワッピング

・ティーニーボッパー

・テディーボーイ

・ヴァンパイア・ライフスタイル

・ビデオゲームカルチャー

・ワレズシーン

・ウィーアブー

・ザズー