【用語解説】悪魔主義「キリスト教徒が敵対者に向かって指す罵声語」

悪魔主義 / Satanism

キリスト教徒が敵対者に向かって指す罵声語


概要


敵対者に向かって使う「悪魔主義」


悪魔主義(サタニズム)とは、悪魔に基づいたイデオロギーや哲学信仰の一群。現代の宗教的な悪魔主義の慣習は、公式には1966年の悪魔教会の創設から始まったとされているが、それ以前からも存在はしている。

 

公の慣習以前、悪魔主義という言葉は現代のようなアイデンティティを指す言葉ではなく、さまざまなキリスト教の宗派たちが、自分たちの観念的敵対者を告発する際に使われてきた言葉である。「邪教」「カルト」という言葉の使い方とよく似ており、もともとは批難される側に向かって使う言葉である。

 

キリスト教の歴史内でさまざまなグループが悪魔崇拝実践者として告発されてきた。中世の時代では、カトリック教会の異端審問において、テンプル騎士団やカタル騎士団などの様々な異端のキリスト教の宗派やグループが、秘密の悪魔の儀式を行ったとして批判された。

 

その後の近世では、魔女の悪魔的陰謀が蔓延しているとの信念が、ヨーロッパや北米の植民地で蔓延し、「魔女」と疑わしい人物が捕らえられ、大規模な魔女裁判が行われた。

 

プロテスタントやフランス革命などの発生の背景には悪魔の陰謀が活発であるという告発は、18世紀から20世紀の間キリスト教世界で広まった。プロテスタント側にすれば、ローマ教皇こそ反キリスト者であり悪魔主義であるという。

 

巨大な悪魔の陰謀というアイデアは、1890年代にフランスで起きたタクシルのデマで新たな最高潮に達した。それは、フリーメーソンが儀式の中で、サタン、ルシファー、バフォメットを崇拝しているという主張だった。

 

1980年代から1990年代にかけて、悪魔主義のグループが、彼らの儀式で児童たちを定期的に性的虐待したり、誘拐したり、人身売買しているのではないかとの懸念がアメリカやイギリスを中心に広がった。

 

この児童虐待の陰謀が現在まで続いている悪魔主義の1つの代表例Qアノンと呼ばれることもある。アメリカの民主党議員が悪魔主義と認知されており、特にジョー・バイデンの息子のハンター・バイデンには、PC修理店で忘れた自身のハードディスクから児童虐待のビデオが流出したことから、多くの人が悪魔主義者と認知している。

アイデンティティとしての悪魔主義


また、19世紀以降、自分自身で「悪魔主義者」と名乗ったり、悪魔のイメージを自ら使うさまざまな小宗教団体や「ゴス」などサブカルチャーのグループが出現しはじめる。

 

1960年代以降に登場した悪魔主義は多岐にわたるが、大きく分けて神道的悪魔崇拝派と無神論的悪魔崇拝派の2つの傾向があるとされている。

 

神論的な悪魔崇拝者は、悪魔を超自然的な神として崇拝し、全能ではなくむしろ家長として見なしている。対照的に、無神論的な悪魔崇拝者は、悪魔をある種の人間的特徴の象徴に過ぎないと考えている。

 

現代の悪魔主義の中心はおもにアメリカであり、その思想はグローバル化とインターネットの影響で他の地域にも広がっている。インターネットは、ほかの悪魔主義への認識を広め、悪魔主義者論争の主戦場でもある。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Satanism、2021年2月4日アクセス