【ガロ】丸尾末広インタビュー3「留置所生活」

丸尾末広インタビュー3

留置所生活


-捕まったのはその後ですか?

 

丸尾:そう、その後万引きで捕まったんだよね。20くらいだったかな。

 

-どこで?

 

丸尾:秋葉原のレコード店で。

 

-何を盗んだの?

 

丸尾:ピンクフロイドとかサンタナとかね(大爆笑)。あのころ流行ってたから。それでガードマンに押さえられてさ。もうしょうがないと思って、一回留置所経験しようと開き直った(笑)。

 

-どのくらい?

 

丸尾:二週間ぐらいかなあ。

 

-長いですねえ。

 

丸尾:それは、その時住所不定の無職だったからね。初犯だったら普通説諭だけで帰さたりするんだけどね。でも身元がはっきりしないと厳しいんだよ。俺さ、そのころは友達の所に荷物を預かってもらって、自分は蒲田の一泊五百円の木賃宿に泊まってたんだよね。

 

-取り調べも厳しかったんですか?

 

丸尾:それがさ、面倒くさくっていい加減に言っていたら向こうがすごく怒っちゃって(笑)。チャランポランだし反省の色もないから、懲らしめようと思ったんじゃないの(笑)。

 

-じゃ、その間ずっと雑居房に入ってたんですね。

 

丸尾:そう。留置所だからね。留置所、拘置所、刑務所だからね(笑)拘置所にははいっていないから、起訴されてないからさ、前科にはなっていないんだよね。だから賞罰はないの(笑)それで、本は読んでもいいけれど、寝転がったりしちゃいけないんだよね。でも一日に一回タバコタイムがあってベランダみたいなところにだされてラジオ体操をしたあとに一服出来る。あっ、そういえばそのときの同じ房に、ガロ知っているひといたよ(大爆笑)

 

-やだねまったく!

 

丸尾:話をしていたら漫画の話題になってさ、「おまえ漫画好きなのか、ガロとか読んでないの」って聞くんだよね(笑)その人、組合運動で公務執行妨害で捕まったらしくてさ。池上遼一さんのファンだって言ってた。池上さんと林静一さんの特集号を持ってたって言ってた(笑)

 

-それで結局起訴にならずに釈放されて、その後も懲りずに万引きはやってたんですか?

 

丸尾:まあ、しばらくはやってなかったよ。で、また引っ越したりしていた。あと網走のパチンコ屋でバイトしたりしてね。

 

-網走!?どうしてまた?

 

丸尾:北海道に遊びに行ったら、たまたまそこのパチンコ屋で店員を募集していたのね。で、やろうかなって思って(笑)「東京の人間だけどいいか」って聞いたら「いいよ」っていうんでやったの。でも毎日便所掃除ばっかりでさ(笑)。それがきったねえ便所で、トイレットペーパーが水に溶けてドロドロになってるは糞はついてるしさ。それに寮に入れてもらってたんだけど、三畳の部屋がベニヤ板で仕切ってあって、醤油で煮しめたような布団しかないんだよね。そこに一ヶ月いたよ(笑)。ここにいた時、布団の中で新聞読んでいたら、歌手の克美しげるが愛人を殺して逮捕されたニュースがでてたよ(笑)。

 

-結構平気で飛び込むんですね、そういうところに。

 

丸尾:そうそう(笑)。

 

-でもやっぱりいつも漫画のことは頭から離れなかったでしょう。

 

丸尾:そうだね。引っ越しするたび「よし、今度こそちゃんとやろう」っていつも思ってたから。でもけっきょくやらないんだよね(笑)。でも一度どこかの雑誌に同人誌の募集して、それで一時期漫画家志望の人と会っていた時もあったけれどね。でもあのひとなんかそのときもう半分浮浪者みたいだったから、どうしているんだろうね。そのまま浮浪者になっちゃったかもね(笑)。