HIV「エイズを発症させるウイルス」

概要

HIV / ヒト免疫不全ウイルス

エイズを発症させるウイルス



HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、ヒトの免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的にエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症させるウイルス。

 

1980年代にHIVは現れ、おもに米国とヨーロッパを襲った。当初、HIVに感染するのはサンフランシスコやニューヨークなどの大都市に住む同性愛の男性にほぼ限られていた。セレブリティと呼ばれる人が次々とこの病気で亡くなったため、この問題は一気に注目された。

 

その後の研究で、HIV/エイズ・ウイルスの感染経路は多様であることがわかる。汚染された血液の輸血や、コンドームを使わないセックスでも感染するし、罹患者も男性や同性愛者とは限らない。

 

科学者の大半は、そもそもHIVはサルなどヒト以外の動物がかかる病気だったのだ、おそらく狩りで捕らえた野生の動物の肉を食べる習慣から、ヒトに感染したのではないかと考えている。ただし、科学者の中にはこの説明に納得しない人々もおり、米国の科学者がうっかり作ってしまった人工ウイルスではないかと唱えるものもいる

 

1970年代のニクソン政権のころ、科学者がおこなった癌治療の研究実験中にエイズ・ウイルスがたまたまできてしまい、実験中の被験者に感染して流出したという主張がある。

 

さらに、深読みする人は、HIVは特定の層の人々、たとえば、LGBTやアフリカ系米国人コミュニティにわざとばらまかれた生物兵器ではないかと主張するものもいる。

HIVと政治問題


1983年に、パスツール研究所のリュック・モンタニエとフランソワーズ・バレシヌシらによってエイズ患者から発見され、分離され「LAV (Lymphadenopathy-associated virus)」と命名された。

 

1984年に、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のロバート・ギャロも分離に成功し、「HTLV-III (Human T-lymphotropic virus type III)」と命名した。

 

続いて、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のレヴィらも分離に成功し、「ARV (AIDS-associated retrovirus)」と命名した。

 

LAV、HTLV-IIIおよびびARVは、後にいずれも同じウイルスである事が明らかとなりHIV-1と改称された。

1985年には、モンタニエらが、エイズ患者から新たな原因ウイルスを分離し、「LAV-2 (Lymphadenopathy-associated virus-2)」と命名し、LAV-2はその後HIV-2と改称された。

 

最初の発見者を巡って、モンタニエとギャロの仏米の研究チームが長年にわたって対立し、1994年に両者が共に最初であるとして決着したが、長期の対立はエイズ治療薬の特許が絡むもので、治療薬の発売を遅らせないための政治的決着であった。

HIVと治療


製薬会社はエイズ患者のための抗レトロウイルス療法を開発した。寿命を延ばすが、毎回使用する薬物治療はウイルスを殺し、HIVゲノム(宿主DNAに組み込まれる)を引き起こし、数週間後にウイルスをより多く産生する。