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【作品解説】丸尾末広「トミノの地獄」

丸尾末広「トミノの地獄」

見世物小屋に売り飛ばされた双子の物語


丸尾末広「トミノの地獄」1巻表紙。
丸尾末広「トミノの地獄」1巻表紙。

概要


奈落の底へ転げる時代と不幸な双子の境遇


『トミノの地獄』は月刊コミックビーム (エンターブレイン)の2014年3月号から2019年1月号の間に連載されていた丸尾末広による長編漫画。キャリア初となる巻数を配した最大の長編作。 

 

「幽霊」女優として活躍する母親と怪物的な見世物小屋の興行師の父のあいだに生まれた二卵性双生児の双子の姉弟トミノとカタンは、生まれてすぐに棄てられ、親戚に預けられる。

 

親戚からの虐待の末、二人は浅草の見世物小屋へ売り飛ばされることになるが、似たような境遇の見世物芸人の仲間たちと出会い、生まれてはじめて「居場所」を得る。

 

安堵をもつかのま、興行主の指示で不幸にもトミノは新興宗教の教祖となった見世物芸人蛸娘・エリーゼのお付きにされる。一方のカタンは見世物の稽古で火傷を負い、遠い孤島に送られ、二人は離ればなれに暮らすことになる。

 

離れた場所で暮らす二人は「この世の終わり」を同時に幻視する。「時代」は「戦争」という奈落の暗黒へと転げ落ちていく時期だった。

初の長編作と同時に集大成的作品


本作は丸尾のキャリア初となる長編作として解説されるが、これまでの丸尾末広作品の集大成的であり、また自伝的な要素も含まれる。本作に登場するキーワードを列挙すると

 

見世物小屋・フリークス・シュルレアリスム・幻視・昭和レトロ・捨て子・虐待・浅草・人身売買・離ればなれ・虫・孤島・幽閉・脱走・身体改造・終末感・火事・ガロ系作家・ミイラ・鉤十字・斜視・首・興行師・双生児・幽霊女優・小人・廃墟・新興宗教・宦官・去勢・包茎(未発達な性器)・女相撲・乞食・薬・刺青・解剖学・再会・英語・中国語・眼球・墜落事故・インド人・太鼓・贋作・猫・傍若無人な父・父親殺し・再会・隠れキリシタン・教会・マリア観音・長崎・原爆

 

などである。